ユリウスの視線が、つい、と男の去った方へと向けられる。

「ティオ族のことを知り陛下を狙ったのなら、目的は予知の力か?」

「モデストみたいに利用するつもりってことか」

 なるほどとルーカスは続け、ならず者たちの亡骸を見た。

「過激なヤツのようだし、警戒を強めるべきだな。まずはライル王子殿下の吉報を待とうじゃないか」

「そうだな。ルーカス殿、ここはあなたに任せても?」

 ユリウスが訊ねると、ルーカスは気持ちよく頷く。

「ああ、もちろん。陛下を早く城へ。ウィルも一緒に行ってこい」

「わかった」

 他にもメアリの護衛にふたりほどつかせ、ルーカスは騒ぎを聞きつけた王立騎士団の者たちに状況説明始めた。

「陛下」

 大きなユリウスの手がメアリの背に触れる。

「城へ急ぎましょう。きっとイアン殿も心配しているはず」

「ええ、そうね」

 仕事仕様に切り替えたユリウスに力なく微笑み、騎士たちと共に城へと向かうメアリ。

 胸の内が不安に覆われ、一体何が起きているのかと視線を上げた先には、何も語らない月が静かにメアリを照らしていた。