ライルの剣閃が疾風の如くならず者たちを襲うのに合わせ、ユリウスもメアリを守りつつ剣を振るう。

「ライル! ありがとう」

「礼なら、君の口づけで願いたいね」

「却下だ!」

 ユリウスが咎めて、ライルが笑う。

 ヴラフォス帝国の皇子とフォレスタット王国の王子の共闘により、瞬く間にならず者たちを追い詰めていった。

「くそっ、これじゃ目的を達成できずにやられちまうじゃねぇか! おい、お前らずらかるぞ!」

 リーダーが発する退却の声を聞き、数名の動けるならず者たちが、逃げようとした……のだが。

「う…ぐっ……あ……」

「うあ……くるしっ……!」

 次々とならず者たちは口から血を吐き、膝をついて倒れ始めた。

 リーダーの男も喉をかきむしりながら地面をのたうち回る。

 異様な光景にメアリが眉をしかめると、不穏な気配を察知したユリウスとライルが民家の屋根を見上げた。

 いつからそこにいたのか。

 青い屋根の上に立つ人影があった。

 目深に被った白いフードではっきりと顔は見えないが、口元が楽し気に歪む。

「大丈夫。目的は達成できたよ」

 降ってきたのはややハイトーンボイスな男の声。

「僕にはちゃんと確認できた。だからお前らは用済みだ」

 優しげな声色で冷徹な言葉を投げると、死に飲み込まれゆくうめき声が全て消えた。