──隙がありすぎる。

 人払いされた女王の部屋で鎧を外したユリウスから忠告を受けたメアリは、素直にごめんなさいと謝った。

 ライルのことで心配をかけていることについては心から申し訳なく思っている。

 だが、ユリウスの姿を見るとどうしてもヴェロニカのことを思い出してしまうのだ。

 それ故に、彼の目をしっかり見ていられず、抱き締める逞しい腕からそっと逃れた。

「メアリ?」

「なにか、飲むものを用意するから待っていて」

 言い訳をして、背を向ける。

 ユリウスの視線が背中に注がれているのを感じながら、テーブルに置かれたグラスに透明なレモン水を優しく流し入れた。

 これが嫉妬という濁った感情であることは、メアリも薄々気付いている。

 自分にはないものを持っているヴェロニカ。

 女性としてはもちろんだが、もしもランベルトに抑圧されていなければ、良き君主となれた可能性もある。

 男漁りが激しいという評判は、逆に言えば男性の心を掴むのが上手いということにもなるのではないか。

 その手練手管を政治に活かせたら?

 政治だけではない。

(ユリウスに、向けられたら……?)

 ユリウスを見つめる妖艶な眼差しが、脳裏に焼き付いて離れない。