月夜見の女王と白銀の騎士

「う、運命、ですか?」

「そう、運命」

 メアリを間に挟んでライルの反対側に座るイアンは、黙って聴き耳だけ立てている。

 相手はフォレスタットの王子だ。

 政略結婚の相手としては申し分もない故、余計な口出しをするつもりはないのだろう。

 しかし、メアリにはユリウスがいる。

 相手に合わせて調子のいい返事をすれば面倒なことにもなりかねず、かと言ってきっぱり袖にして後の国交関係に影響があっても困る。

 頭をフル回転させたメアリは、立ち回りの一歩として笑みを浮かべた。

「もしくは、明日の会談が良いものになるという思し召しかもしれないですね」

 堂々と振る舞いながらも、内心これで大丈夫だろうとかとドキドキしつつライルの反応を待つと、彼は「へぇ? これはなかなか手ごわそうだ」と楽しそうに目を細める。

「陛下、そろそろご挨拶を」

 まるで助け船のようにイアンが促し、メアリは密かに胸を撫で下ろした。

 ライルを迎え、大臣、伯爵、侯爵ら重鎮の前で、数日前より練習していた歓迎のスピーチを披露したメアリ。

 大きな失敗もなく乾杯すると、大広間には宮廷楽団による優雅な演奏が始まった。

 王族専属シェフによる料理が並び始めると、あちこちから談笑する声が聞こえてくる。