月夜見の女王と白銀の騎士

 青年が話していた答え合わせは、同日の夕暮れ時、アクアルーナ城で最大の広さを誇る大広間にて行われた。

 金色に輝く室内に、煌びやかな装いの王国貴族たちが集まる晩餐会。

 淡いブルーに染まったシルク生地のドレスを着たメアリは、驚きに目を見張った。

 侍従を伴い、堂々とした足取りで歩み寄る者に見覚えがあったからだ。

「あなたは、フィーユの……」

「ご即位にあたり、心よりお祝い申し上げます。はじめまして……ではなく、二度目まして、メアリ女王陛下。俺はライル・フォンティーヌ。フォレスタットの第三王子です」

 微笑みと共に恭しく頭を下げた青年は、確かに昼間、林の中で遭遇した者。

 メアリの隣に控えるイアンが「いつの間にお知り合いに?」と冷静な目で問いかける。

「知り合いというか、昼間助けた動物の飼い主さんで……」

 説明しながら思い出す青年の姿は、今思えば身なりが良く一挙手一投足に品があり、王子であるなら納得のいくものだった。

「やっぱり正解だったな。近衛騎士に大層大切そうに守られていたし、うちの宰相から聞いていた背格好とも似ていたから、あなたがメアリ女王陛下だという可能性は高いと思ったんだ」

「噂通り、ライル王子殿下は観察眼に長けた方のようですね」

 イアンが褒めそやすと、ライルは「いやいや」と頭を振った。

「あなたにかないませんよ、イアン宰相殿。何せ母上から、あなたを見習ってこいと言われていますからね」

「それは恐悦至極です。どうぞ、明日の会談ではよろしくお願いします」

「ああ、こちらこそ」

 話が終わるとイアンに促され、メアリは貴族らが見守る中、女王の席へと向かう。

 国賓であるライルの席はメアリの隣と決まっているのだが……。

「美しいあなたと再会できたうえ、隣に座れるなんて最高だな。これはもしかして運命かもしれないな。どう思う?」

 ユリウスの忠告にもあった軽薄さをさっそく出してきた。