メアリは青年が帯剣していることを思い出す。
もしや彼は傭兵を生業にしていて、故に騎士に詳しいのかもしれないと思い至った。
ユリウスも青年が外套の下に剣を所持していることには気づいていたようで、警戒するように双眸を細める。
「答える必要はないだろう。さあ、戻ろう」
促して、大切そうにメアリを青いマントで隠した。
その仕草に青年が「ふぅん、なるほどね」と呟いたのを、メアリとユリウスは聞き逃さなかった。
ふたりが振り返ると、青年は意味ありげに片口を上げる。
「答え合わせ、楽しみにしてるよ」
言葉通り、楽し気に笑んで白い歯を見せると、「フィーユのこと、ありがとうな」と告げて背を向け去っていった。
「答え合わせ?」
首を捻るメアリの隣で、ユリウスは青年が去っていった方向を見つめる。
「……あの顔、もしや……」
独り言ちた声にメアリが見上げると、ユリウスは林から視線を外した。
「行こう。イアン殿がきっとお怒りだ」
イアンの名聞いて、メアリはうっ、と胸元を押さえる。
「そ、そうよね」
「あと、俺もね」
咎められ、すぐさま謝ろうと開きかけた唇は、ユリウスの唇に塞がれてしまった。
万が一、誰からも見られることのないようマントで覆い隠して。
「君が、彼の肩に乗っていた動物を助けたのはわかってる。でも、ああいう軽薄なやつもいるし、悪意を持つ相手だった可能性もあるんだ」
ユリウスの言葉は最もで、メアリは反省し小さく頷く。
「君は女王だから大切な身だ。そして、俺にとってはかけがえのない、変えなんて効かない愛する女性だ。どうか、城の外に出たら俺から離れないで。互いにどんな緊急時でも、俺の名を呼んで。呼べないのなら腕をひいて知らせてほしい」
「わかったわ。次からは必ずそうする。心配をかけてごめんなさい、ユリウス」
諭され、目を見てしっかりと約束をすると、ユリウスはメアリの額にそっと唇を落としてからマントを下ろす。
やがて林を抜けて港に戻ったメアリは、案の定イアンにこっぴどく叱られたのだった。
もしや彼は傭兵を生業にしていて、故に騎士に詳しいのかもしれないと思い至った。
ユリウスも青年が外套の下に剣を所持していることには気づいていたようで、警戒するように双眸を細める。
「答える必要はないだろう。さあ、戻ろう」
促して、大切そうにメアリを青いマントで隠した。
その仕草に青年が「ふぅん、なるほどね」と呟いたのを、メアリとユリウスは聞き逃さなかった。
ふたりが振り返ると、青年は意味ありげに片口を上げる。
「答え合わせ、楽しみにしてるよ」
言葉通り、楽し気に笑んで白い歯を見せると、「フィーユのこと、ありがとうな」と告げて背を向け去っていった。
「答え合わせ?」
首を捻るメアリの隣で、ユリウスは青年が去っていった方向を見つめる。
「……あの顔、もしや……」
独り言ちた声にメアリが見上げると、ユリウスは林から視線を外した。
「行こう。イアン殿がきっとお怒りだ」
イアンの名聞いて、メアリはうっ、と胸元を押さえる。
「そ、そうよね」
「あと、俺もね」
咎められ、すぐさま謝ろうと開きかけた唇は、ユリウスの唇に塞がれてしまった。
万が一、誰からも見られることのないようマントで覆い隠して。
「君が、彼の肩に乗っていた動物を助けたのはわかってる。でも、ああいう軽薄なやつもいるし、悪意を持つ相手だった可能性もあるんだ」
ユリウスの言葉は最もで、メアリは反省し小さく頷く。
「君は女王だから大切な身だ。そして、俺にとってはかけがえのない、変えなんて効かない愛する女性だ。どうか、城の外に出たら俺から離れないで。互いにどんな緊急時でも、俺の名を呼んで。呼べないのなら腕をひいて知らせてほしい」
「わかったわ。次からは必ずそうする。心配をかけてごめんなさい、ユリウス」
諭され、目を見てしっかりと約束をすると、ユリウスはメアリの額にそっと唇を落としてからマントを下ろす。
やがて林を抜けて港に戻ったメアリは、案の定イアンにこっぴどく叱られたのだった。



