青空で燦々と輝く太陽が天辺を過ぎた時刻、首都アクアルーナの港は今日も活気に溢れている。

 陽の光を浴びて輝く海に往来する交易船の中、穏やかな波を受け停泊している大型船をメアリは見上げた。

 豪華な装飾と艦砲を備えた『アンテリュール号』は、歴代の王が航海する際に使用してきた大型帆船だ。

 船首には航海の安全を見守る黄金で作られた像が飾られており、今メアリが目にしているのは先王メイナードをイメージして作られたものだ。

 この像は王が即位する度に制作されるのだが、メイナードは海の神ポセイドンがいいと本人が口にしたことから、本人をイメージしたものではなくポセイドンに決まったのだとか。

 王城からの道すがら、イアンが教えてくれた話を思い出しながら、メアリは雄々しくも優しい眼差しのポセイドンを見て、どことなく父に似ている気がして微笑んだ。

「こちらの像は女王陛下の像が出来上がり次第、王立博物館へと運び管理される予定です」

 歴代の王たちの船首像の保管場所を説明するのは、像の制作を担う彫刻家だ。

 彼がまだ二十代の頃、同じく彫刻家である父と共に、メイナードに依頼されたポセイドン像を手掛けていると聞いた。

 今回は、彼の息子と共に制作するとのことで、親子で考案したというメアリをイメージした像のデザイン画を見せてもらう。

 描かれているのは王の剣を抱き締めた、美しい風貌の女神だ。

「この角度から合わせますと、このような感じになります」

 彫刻家が船首に重ねるようにデザイン画を見せると、イアンが悪くないと首を縦に振る。

「どうですか、陛下」

 満足気なイアンに尋ねられ、メアリは「とても素敵なデザインだと思います」と褒めてから「ただ、美しすぎて申し訳ない気持ちになるというか」と、潮風に靡く髪を押さえながら眉を下げて微笑んだ。