気付けば、メアリは見慣れた天蓋の下にいた。

(ここ、は……私の部屋……)

 ぼんやりと視線を動かすと、自分を覗き込むように見下ろすユリウスを見つける。

「メアリ……!」

「ユリウス……」

 自室にいるということは、自分は助け出されたのだろう。

 迷惑をかけてしまい申し訳ない気持ちと、ひとまずは危機が去った安堵が混ざった息を吐いた。

 いつから握っていたのか、自分の手を両手で包むユリウスの表情はどこか泣き出しそうに見える。

「気分は? どこか痛いところは?」

 気づかわし気な声色で尋ねられ、メアリはゆっくりと首を横に振った。

「大丈夫。助けに来てくれてありがとう、ユリウス」

 意識を失う直前の光景を思い出し感謝を告げるも、ユリウスは小さく頭を振る。

「俺が君を置いて行ってしまったせいで、君を危険な目に合わせてしまい、すまなかった」

 ああ、やはり責任を感じさせてしまっていた。
 騒動のタイミングの良さに、何かおかしいと気付けなかったのは自分も同じなのに。

「君の騎士となり守ると誓ったはずが、本当にすまない」

 自分を責め続けるユリウスに、メアリは弱々しく微笑み、再び首を振って否定する。

「暗殺という運命の歯車を動かしてしまったのは私の意思。だから、ユリウスが気に病む必要はないの。謝るべきは、ユリウスや皆を巻き込んでしまった私の方。ごめんなさい」

 横になったまま申し訳なさそうに眉を下げていたメアリが、ゆっくりと起き上がるのをユリウスが支えた。