特別弱っているわけではなさそうで、ひとまず安堵すると足の縄を斬って取り払った。

 キン、キン、と金属音がぶつかる音が続く。

 剣を交わすふたりをユリウスが振り返った時、青年はライルの長剣に短剣を滑らせリーチの差を埋めた。
 青年がもう一本、腰から短剣を引き抜くとライルの顔めがけて振りかざす。
 ライルは首を傾け冷静に避けるも、その切っ先は頬を掠めて薄く皮を裂いた。
 押し返したライルが再び剣を振るう。

 親友の命を奪った、その報いを受けさせるために。

「はあっ!」

 ライルが繰り出す連撃に、青年は苦悶の表情を見せた。

「くっそ……!」

 ユリウスから受けた肩の傷が傷み、腕が上がらなくなってきているのだ。

 ライルの脳裏に親友の姿が浮かぶ。
 もう二度と、大笑いしながら酒を酌み交わすことのできぬ、かけがえのない友の姿を。

 悲しみと怒りを込めたライルの剣が、青年の眉間と眼帯を切りつける。
 はらりと地面に落ちた眼帯と、眉間から流れる血。

 青年は、オッドアイでライルをきつく睨んだ。

「僕の仕事の邪魔をするな!」

 怒りに身を燃やし斬りかかるのを、ライルは渾身の力を持って剣で受け止める。

「そう、だなっ。そろそろ終いにしようか!」

 そう言って不敵な笑みを浮かべた直後。

「うっ……」

 青年は短く呻くと同時、身体を大きく震わせた。