「キューーゥッ!」

 ぶつぶつと呟くダリオの声に、フィーユの高い声が重なる。
 二度、三度とフィーユが鳴くたびに、剣と剣がぶつかり合う音が近づいてくることを察ししたダリオは目的を悟った。

「ここにいると知らせてるのか。ひどいなぁ。僕らの行いは君の損にはならないのに」

 鳴き続けるフィーユの声を耳にしながら、ダリオはメアリの腕を縛る縄を切り、脇の下と膝裏に腕を入れて横抱きにして立ち上がった。
 メアリの腕がだらりと力なく落ちて揺れる。

(力が……入らない……)

 せっかく腕が自由になったというのに抵抗できず、なすがままに運ばれるだけなんて。

 もう目を開けているのも辛くなってきた視界の中に、愛しい白銀の騎士が現れたのは夢か現か。

「メアリ!」

 切なげに叫んだその声も、現実のものなのか焦がれる故の願望によるものなのか。

 曖昧模糊とした状態で、それでも愛する者を求めて力の入らない腕を必死に動かす。
 けれど、ついに眠気に抗えなくなったメアリは、ひどく重い瞼を閉じ、意識を手放した。