「傷つけないようにってあの方には言われてるけど、気持ちよくするのはありだよね?」

「な、にを……」

「ああ、でも残念、今は時間がないや。ここを出たら、たっぷり可愛がってあげるね」

 圧し掛かった状態でクスクスと笑うダリオは、恐怖に顔を青くしたメアリの口に指を添えると強い力でこじ開けた。

「んんっ!」
 必死に口を閉じようとするも、できた隙間に小瓶の口を押し込まれ、液体がとぷとぷと口内に広がっていく。
 せめて飲み込むまいと溜めておくが、突如ダリオが首を絞めてきたことにより、思わず飲み込んでしまった。

 けほけほと咳き込むメアリを見て、ダリオは手を離す。

「よくできました。ご褒美もたっぷりあげないとね」

 機嫌の良い声でダリオが微笑んだ時だ。

 聖堂の壁に連なる窓ガラスのひとつが突如大きな音を立てて割れ、月光が入りこむ。
 夜空に浮かぶ月はまだ完璧な丸を描いてはいないが、予知の代わりに見える小さなシルエットに、メアリは朦朧としながらも僅かに双眸を見張った。

「フィー、ユ……?」

 ライルの可愛らしい相棒にとても似ているが、なぜか羽が生えている。
 だが、そんな違いも気に留めていられないほど急激に意識が遠のきかけているメアリの上で、ダリオは驚いていた。

「デーアの聖獣? なぜ……いや、巫女様か?」