どこか病的にも見える様子に、メアリは悟る。

 ランベルトは縛られているのだ。
 王位に手を伸ばそうにも、立ちはだかってきたランベルトの兄と甥の存在に。
 激しい執着が、どれほどヴェロニカを苦しめているのかを顧みることもせずに。

 メアリの内に怒りが沸き上がる。

「いい加減にしてください!」

 声を荒げるメアリに、ランベルトは目を見張った。
 今までうっすらと笑みを浮かべて見守っていた青年も、眉を上げて瞳に好奇を滲ませる。

「なっ……小娘が、生意気な口を」

「小娘とか立場とか今はどうでもいいです! いいですか。私は、あなたが私の父や祖父との間にどんな確執があったかなんて知りません。だけど、これだけはわかります。あなたでは、祖父や父が努力を重ねて守って来たアクアルーナを守ることはできない」

 きっぱりと否定され、ランベルトは顔を真っ赤にし身体を震わせる。

「だ、黙れっ」

「いいえ、言わせてもらいます。子供みたいにいつまでも人のせいにして、大切にすべき娘にも押し付けて、そんな人に国の行く末を預けたいと誰が思えますか!」

「うるさいっ! 貴様に私の何がわかる!」

「わかりません! ランベルト様だって私のことをわかろうとしてくれないじゃないですか! どうして共に歩く道を選んでくれなかったのですか! どうして父の死を嘆いてくれなかったのですか! その体には、父と……父と同じ血が流れているのにっ」

 瞳に涙が浮かべるメアリの純粋な訴えを、ランベルトは嘲笑した。

「流れているからこそだが、どうせお前には理解できまい。さあ、お喋りは終わりだ」

 ランベルトはベルトホルダーに下がる剣の柄に手を添える。