「その事件との繋がりは定かではないが、昨日メアリに毒殺未遂の事件があった」

「らしいな。俺の部下から聞いた。ランベルト大侯爵の娘に盛られたんだろう?」

「ああ。だが、催眠剤だと言われていたらしく、利用された線が濃い。毒を渡したのは最近ランベルト大侯爵に仕えるようになったダリオという青年らしい」

 メアリがヴェロニカから得た情報を伝えると、ライルは「なるほど」と眼差しを真剣なものに変える。

「もし、そいつがメアリを襲わせたヤツと同一人物であれば……」

 ライルの言葉にユリウスは双眸を見開いた。

「狙いはメアリか!」

 焦燥を胸に駆け出したユリウスが目指すのは女王の塔。
 後ろからライルが追ってくる気配を感じつつ、メアリが無事であることを祈り走る。

(女王の塔は衛兵を増やして警備を強化してある。控えの間にもうちの部隊の騎士をふたり立たせてる。相手の人数にもよるが、例え数が多くても易々と突破はできないはずだ)

 そう思うのに、女王の塔が近づくにつれて胸騒ぎは強くなる。
 ほどなくして目的地に辿り着いたユリウスは、塔の入り口を警備する衛兵らが地に伏しているのを見つけ目を見張った。
 胸の内で心臓が嫌な音を立て続けている。
 ユリウスは跪き、衛兵の首に指を当て脈を確かめた。

「生きてる」

「こっちも無事だ。特に大きい外傷もない」

 他の衛兵の様子を伺うライルが「まるで寝こけてるみたいだ」と呟き、ユリウスを見上げた。

「ユリウス、ここは俺に任せて早くメアリの元へ」

「助かる!」