──結論から言うと、ヴェロニカは、最近ランベルトに仕えるようになったダリオという名の青年に利用されたらしい。

『もし、貴女が彼を手に入れたいのなら、協力しましょうか?』

 そう言って興味をひき、催眠薬だと手渡された薬の正体は猛毒だったのだ。
 薬をもらう際、青年は『これは差し上げます。ですが、何があっても僕から受け取ったと話してはダメですよ』と話した。
 もしも話したとわかれば、代償にヴェロニカの命をもらうことになると続けて。

 ダリオの特徴は眼帯だという。
 いつも右目を隠していると。
 ユリウスと合流し地下牢から出たメアリは、すぐに今後について相談する。

「ヴェロニカ様の護衛に近衛騎士をつけてほしいの。その後、ランベルト様のお屋敷にダリオという青年がいるか確認を」

 必ずヴェロニカを守る態勢ができてから、ランベルトの屋敷に向かってほしいとメアリは念押しした。

「わかった。急ぎ団長に報告し、指示をもらおう」

「お願いします」

 今の時刻なら騎士の間にいるはずだと、ユリウスはメアリを自室に送りがてら向かうことにする。

「それにしても、ヴェロニカ様にどんな魔法を使ったんだ?」

 早足で柱廊を歩きながら尋ねられ、メアリははにかんだ。

「特別なことは何も。ただ、本音で話しただけなの。相手を信じなければ信じてもらえないように、こちらが心を閉ざしていたら、相手にも開いてもらえないものだと思うから」

「そうだな。君の飾らない、真っ直ぐな心の体当たりは強烈に響くから」

 俺も経験者だからよくわかると微笑むユリウスが語り示すのは、まだそう遠くないふたりの思い出話だ。