「ご、ごめんなさい。ひとりごとなのに」

 反応してしまったことで気分を害してしまったのだと思い謝罪したメアリに、ヴェロニカはゆるりと首を振った。
 ヴェロニカの涙を拭くしぐさに気付いたメアリは、彼女が顔を背けた意味を悟り、また泣きそうになる。

「私、ヴェロニカ様の望む未来のために、まずはヴェロニカ様を牢から出してあげたいです」

「出られたとしても、そんな未来は来ませんわ」

 静かに答えたヴェロニカ。
 メアリは彼女に見えずともはっきりと頭を左右に振る。

「諦めなければきっと掴めます。だから、どうか話してもらえませんか?」

「……話せば、私は殺されます」

「殺させません。必ず騎士たちがお守りします」

 近衛騎士たちは誰もが認める強さを持つ。
 だから心配はないと自信を持って伝えると、ヴェロニカはメアリを振り返った。

「あなたにとって私は政敵でしょう?」

「敵だなんて思ったこと、一度もないです」

 手を差し伸べてくれるというのなら、離すつもりも払いのけるつもりない。
 いつだって喜んでその手を握り返したいと思っている。

「本当に……あなたって、呆れるほどお人好しなのね」

 迷いのないメアリの返答に、とうとうヴェロニカは折れた。

「わかりました。あなたは、私の為に泣いてくれた唯一の人。お教えします」

「ヴェロニカ様! ありがとうございます!」

 花のように笑顔を咲かせたメアリを、ヴェロニカは眩しそうに見てから、毒についての真実をその口から説明した。