月夜見の女王と白銀の騎士

 ヴェロニカは、昨日見たままのドレス姿で、寝台の上に乗り、膝を抱えてうずくまっている。

「ヴェロニカ様」

 声をかけると、頭をゆっくりともたげた。
 ヴェロニカはメアリの姿を認めた刹那、隈の出来た双眸を零れんばかりに丸くする。

「へ、陛下……? なぜ、ここに……」

「毒についてのお話を聞きたくて」

 正直に告げると、ヴェロニカはふいと視線を外し、眉を寄せた。

「何度聞かれても、私はあなたを殺そうとはしていないし、毒だなんて知らなかったとしか話せませんわ」

「はい。信じています。だから、その疑いを晴らす為に真実を話していただけませんか?」

 メアリの言葉に再び目を見張るヴェロニカ。

「私を、信じるというの?」

 毒ではないとしても、ヴェロニカは催眠薬を飲ませようと謀った。
 命を絶つよう命じれば、そうなる可能性もあった。
 しかし、メアリは静かに首を縦に振った。

「ランベルト様も仰っていました。ヴェロニカ様はそんな愚策はとらないと。私もそう思います。狙ったのは私の命ではなくユリウスの心なのだと」

 ヴェロニカは何も答えず、メアリからまた目を反らす。