「この下が牢のあるエリアだ。ヴェロニカ様は奥の牢にいる。途中、他の囚人たちがいるから、この外套を頭から被っておいて」
囚人たちが女王の存在に気付き、縋って騒いだりしないよう、ユリウスはメアリに外套を着せた。
頭からすっぽりと被った外套のフードを手で押さえ、メアリはユリウスの後ろをついて歩く。
湿った通路の両サイドには、黒い鉄格子が等間隔で並んでおり、灯りのない牢は奥に行くほど暗い。
反響する靴音に時折紛れる鉄を引き摺る音は、牢の壁と囚人を繋ぐ鎖のもの。
清潔とは言い難いカビた匂いが充満する長い通路の突き当りに差し掛かると、ユリウスはピタリ、足を止めた。
「俺はここで待っているから」
小声で話し、ユリウスが手でヴェロニカが曲がった先にいることを示す。
メアリはひとつ頷いて、ひとり、先へと進んだ。
そこは、他の牢とは違っていた。
広さもだが、暖炉と寝台が用意されており、明かりもある。
貴族等の地位の高い者が入る牢なのだろうとメアリは推測しながら鉄格子に近づいた。



