活気づいた校内の余韻が、静かに残っていて、それは、この教室も例外ではなかった。

一つ違うことがあるとするのなら、君と僕がいるということだ。

向かい合った君の目は薄らと赤く腫れていて、今まで泣いていたことが伺えた。

君が普段より可愛いのは、やっぱり彼のためだったのだろう。

その彼には、想いを寄せ続けている相手が居るとしても。

ゆるく巻かれた髪も、全部、君は彼に複雑な恋心を持っていたんだなと何処か残念になる自分に嫌気がさした。

先程、体育館で行われたあまりにロマンティックで、非情なエンディングの中、駆けていく君を見て、自然と追いかけてしまっていた僕がいた。

そんな僕も、つくづく君のことを想ってしまっているのだと実感して仕方がない。

目の前で君は、僕には涙を見せまいと、よれたセーターの裾で、目元を拭う。

そんな事しなくていいのに、と思った。

泣いて泣いて、本当に彼のことが吹っ切れるまで、そばにいてあげるから、泣けばいいのだ。

いや、むしろそうして欲しいのは僕なのだけれども。

君の横顔を、眩しく照らして、一瞬見開いた瞳が光った。

君を、夕日の中で美しいと思ったのは、これで何回目だったか。

そんなことを考えながら、珍しく素直に近寄ってきた君に胸を貸す。

幼子をあやす様に、髪を撫でると、制服にじんわりと温かさが滲んでいく。

そんな嗚咽を漏らす君が、言葉を紡ぐからだ。



斜陽に、僕の堰き止めたはずの声が零れてしまうのは。