自らの下駄箱を閉めただけなのに、まるで、胞子をたっぷり蓄えたキノコをつついたかのような、砂埃が舞った。

ガラスを1枚挟んだ向こうの世界では、さっきまで顔を覗かせていた日輪を、確認できない。

むしろ、白い霧がかかっているように見える。

雨だなんて、全くついていないなと思った。

肩を落として、いつかコンビニで買ったビニール傘を広げようとする。

その時何となく、隣をちらりと見ると、大きく息を吸ってしまった。

四月からクラスの離れてしまった君がいる。

君の左手には、いつもの白いトートバッグが握られていて、右手には部活用のものだろうか。シューズケースがかけられている。

なにより、君は傘を持ってきていないことがすぐに分かった。

立ち尽くす君に、声をかけてみると、君は気が付いたような表情をして、苦笑いをした。

僕の傘に入らないかと提案してみる。

勿論、下心を否定することなんてできないが、それ以上に、濡れて帰るなんてことはして欲しくなかった。

渋った君を丸め込んで、引き寄せ、外へと踏み出す。

僕達の上で騒がしいはずの心音を掻き消すほどの、雨音が聞こえてくるのに、前方には、光のハシゴができていた。

君はそれを見て、綺麗だと微笑む。僕は、そんな君を見て、綺麗だねと愛おしさに浸った。

多分、言っている間に晴れてしまうのだろう。

ふと気になって、君に彼の話を振ると、やっぱり表情とは裏腹な空元気が返ってきた。

なのに、その瞳は未だ報われない恋をしている。



だからまだ、一筋の光芒に淡い思いを隠すように、微笑んでしまう。