廊下の角を曲がった途端に、机に反射した色の濃いオレンジ色が飛び込んできた。

思わず目をつぶった光景の中に、窓際の前の方に座る君の影を見つける。

席が隣になることも無ければ、挨拶も殆ど交わしたことは無い。

ただ、クラスメートという認識をしていただけで、君の事なんて何も知らない。

しかし、輝きに縁取られた輪郭から、どうにも目が離せなくなってしまった。

白い少し汚れたカーテンが、君を包み込むように大きく膨れ、揺れている。

その姿が、僕にはとても扇情的に思えた。

君の一瞬にドクンと僕の心臓が脈打つのを感じる。

思わずその光に、声をかけようとしたけど、喉まででかかった言葉を躊躇した。

気づいてしまったのだ。

背中が揺れている、頬が濡れている。

ふと、無造作に消された黒板の上の時計を見あげた。

見慣れたはずの秒針は、いつもより早く進んでいるように感じる。

このままだと、すぐにでも終わってしまうだろうな。と悟った。

それをあまりに勿体なく感じて、もう1度口を開いてみた。

その動機は、あまりに不純だけれど、いてもたってもいられなくなった。

僕の鼓動が、1回目と比べ物にならないほどはやるのが分かる。

驚きで肩を揺らした君の潤む瞳と視線が交差した。

不謹慎なのかもしれない。

それでも、僕の左胸では限りなく恋に近い音がした。



このまま2人、日没の教室に溶けてしまいたい。