人生淡々とこなす、これに尽きると思う。
人気のない校舎裏。
俺は死んだ魚のような目で、今しがた好きですと告げてきた黒髪ボブの女子を見下ろす。
正直誰とも付き合う気ないし俺が好きなのは人間以外の生き物だけなんだよ。
「ごめん、その気持ちには応えられない」
なぜなら君よりフナの方が魅力的に映るから、なんて、ハハッ、言わねえ言わねえ。淡々とこなせなくなる。
「あの、でもわたし、ずっと前から高宮くんのこと好きなんです、諦めきれません……」
目を潤ませるな、すがるように見てくんな。俺の制服の裾を掴むな。
舌打ちをしてしまいそうになるのを堪えた俺を誰か讃えてくれ。
「………好きな奴がいるんだ」
ミドリムシとかさ。そこら辺の女子よりかわいいよアイツら。
「……きっとわたしと付き合ったらいいことありますよ」
変な子に捕まっちゃったな。
黒髪ボブの女子はにんまり勝ち誇ったような笑みを浮かべている。俺はドン引いた。
「どんないいことがあるのかな」
「その濁った目がイキイキと輝きます！」
「帰るね、ばいばい」
俺は盛大に舌打ちをし、くるりと黒髪ボブの女子(クソ無礼)に背を向けた。
「待って待って待って待って！」
「なんだよ気持ちわりいな」
「はぁん！辛辣な高宮くんもステキ」
腕にしがみついてくる黒髪ボブの女子の恍惚とした顔に吐き気を催す。砂でもぶっかけてやりたい。
「ゴールは結婚だけど！お友達から始めさせて下さい！」
「頭のネジどこに落としてきたの？ほんと拾いに行った方がいいぜ」
「ぎゃ！なんで砂蹴ってかけてくるの？！」
砂をかけられても黒髪ボブの女子、心底楽しそう。遊んでやってる気分になって不快。
「あ！わたしの名前知ってます？藤原っていうんですけど」
黒髪ボブの女子は、藤原というらしい。ああいらない情報仕入れちまった。今すぐ消したい。
「それに高宮くん、わたしと友達になったら２度と告白なんてイベント経験させません！」
「ふうん、じゃあ今日から友達な」
その直後、藤原が白目を剥いた。(後から聞いたら嬉しさがキャパオーバーしたとか意味わかんないこと言ってた)
人生淡々とこなさなくちゃな。
－－－俺は熱帯魚に餌やりをしながら、学生時代のほんの一部を思いだしていた。
ひらひらと美しい尾びれを優雅に揺らしながら泳ぐ熱帯魚のつぶらな瞳と目が合った気がする。なんだか慰められている気分だ。そうだよな、藤原の馬鹿さ加減は出会った時にはもう末期だった。救いようがなかったよな。
「高宮くん怒ってます？」
俺の周りでうろうろしている藤原をガン無視しながら台所の惨状をどう処理するか考えようと思ったが気が遠くなりそうなのでやめた。
「まさかオムライスを作ることがあんなにも命懸けだったとは思わなんだ……藤原一生の不覚、切腹して償います故どうかお許しを」
「切腹しなくていいから掃除しといてくんない？」
50分ぶりに口を開けば、藤原は敬礼をビチッとキメて「うおおおお！」女子らしからぬ雄叫びを上げながら興奮ぎみに台所に向かっていった。わあ、きもちわるい。なんで俺あんな奴と付き合ってるんだろう。
人生淡々とこなす、俺のモットーが二の次だふざけんじゃねえ。
悪夢の始まりとも呼べる藤原との出会いから数年で同じ部屋で朝を迎えるようになり、朝ごはんを作りたいと主張する藤原に興味本位で台所を貸し『せめて台所のありとあらゆる場所にたまごとケチャップを飛び散らせない安全なオムライスを作れるように教育しないとな』そう強く心に誓う日が来てしまった。
人気のない校舎裏。
俺は死んだ魚のような目で、今しがた好きですと告げてきた黒髪ボブの女子を見下ろす。
正直誰とも付き合う気ないし俺が好きなのは人間以外の生き物だけなんだよ。
「ごめん、その気持ちには応えられない」
なぜなら君よりフナの方が魅力的に映るから、なんて、ハハッ、言わねえ言わねえ。淡々とこなせなくなる。
「あの、でもわたし、ずっと前から高宮くんのこと好きなんです、諦めきれません……」
目を潤ませるな、すがるように見てくんな。俺の制服の裾を掴むな。
舌打ちをしてしまいそうになるのを堪えた俺を誰か讃えてくれ。
「………好きな奴がいるんだ」
ミドリムシとかさ。そこら辺の女子よりかわいいよアイツら。
「……きっとわたしと付き合ったらいいことありますよ」
変な子に捕まっちゃったな。
黒髪ボブの女子はにんまり勝ち誇ったような笑みを浮かべている。俺はドン引いた。
「どんないいことがあるのかな」
「その濁った目がイキイキと輝きます！」
「帰るね、ばいばい」
俺は盛大に舌打ちをし、くるりと黒髪ボブの女子(クソ無礼)に背を向けた。
「待って待って待って待って！」
「なんだよ気持ちわりいな」
「はぁん！辛辣な高宮くんもステキ」
腕にしがみついてくる黒髪ボブの女子の恍惚とした顔に吐き気を催す。砂でもぶっかけてやりたい。
「ゴールは結婚だけど！お友達から始めさせて下さい！」
「頭のネジどこに落としてきたの？ほんと拾いに行った方がいいぜ」
「ぎゃ！なんで砂蹴ってかけてくるの？！」
砂をかけられても黒髪ボブの女子、心底楽しそう。遊んでやってる気分になって不快。
「あ！わたしの名前知ってます？藤原っていうんですけど」
黒髪ボブの女子は、藤原というらしい。ああいらない情報仕入れちまった。今すぐ消したい。
「それに高宮くん、わたしと友達になったら２度と告白なんてイベント経験させません！」
「ふうん、じゃあ今日から友達な」
その直後、藤原が白目を剥いた。(後から聞いたら嬉しさがキャパオーバーしたとか意味わかんないこと言ってた)
人生淡々とこなさなくちゃな。
－－－俺は熱帯魚に餌やりをしながら、学生時代のほんの一部を思いだしていた。
ひらひらと美しい尾びれを優雅に揺らしながら泳ぐ熱帯魚のつぶらな瞳と目が合った気がする。なんだか慰められている気分だ。そうだよな、藤原の馬鹿さ加減は出会った時にはもう末期だった。救いようがなかったよな。
「高宮くん怒ってます？」
俺の周りでうろうろしている藤原をガン無視しながら台所の惨状をどう処理するか考えようと思ったが気が遠くなりそうなのでやめた。
「まさかオムライスを作ることがあんなにも命懸けだったとは思わなんだ……藤原一生の不覚、切腹して償います故どうかお許しを」
「切腹しなくていいから掃除しといてくんない？」
50分ぶりに口を開けば、藤原は敬礼をビチッとキメて「うおおおお！」女子らしからぬ雄叫びを上げながら興奮ぎみに台所に向かっていった。わあ、きもちわるい。なんで俺あんな奴と付き合ってるんだろう。
人生淡々とこなす、俺のモットーが二の次だふざけんじゃねえ。
悪夢の始まりとも呼べる藤原との出会いから数年で同じ部屋で朝を迎えるようになり、朝ごはんを作りたいと主張する藤原に興味本位で台所を貸し『せめて台所のありとあらゆる場所にたまごとケチャップを飛び散らせない安全なオムライスを作れるように教育しないとな』そう強く心に誓う日が来てしまった。
