時刻は23時を回った。


浴槽の清掃をする前の睡眠タイム。


...のはずだった。



――ドタン。



隣室から鈍い音が聞こえた。


慌てて駆けつけると、そこにはとんでもない光景が広がっていた。



「紗彩ちゃんごめん。起こしちゃった?」


「いえ。眠ってなかったので大丈夫です。それより黒羽くんはどうしてこんな...」



こんなにぼろぼろなの?


全身黒のジャージに黒の帽子、全てが砂で汚れているし、所々破れている。


顔は誰かに殴られたのか大きく腫れてる。



「学校に行く途中でヤンキー5人に襲われそうになった女の子を見かけて助けてあげたらしんだけど、1対5だからこの状態。応援の練習のし過ぎて声が出なくなったから助けも呼べなくて近くの空き地でずっと寝転がってたらしい。そこをちょうど見回りに来た警察の方が見つけて下さって俺に連絡をくれたんだ」


「そうだったんですか...」


「沼口さんには明日一応報告するけどそれまでは皆にも言わないでおいて。俺コンビニで応急手当グッズ買ってくるから15分くらい見守ってあげて」


「はい、分かりました」