「凜!お前ちょーし乗ってんじゃねえよ!ちょっと腹筋付いたからって見せつけやがって」


「努力の証だも~ん。何にもしてない黒ちゃんには言われたくない」


「はあ?!おれだって...。いや、おれだってやれば出来るんだ!」



凜くんVS黒羽くん。


ほぼ毎日この構図。



「もぉらいっ!」


「おい!おれの卵焼きだろ!勝手に食ってんじゃねえ!」


「さあやんおいしぃ」


「ありがとう」



私がそう言うと黒羽くんはちっと舌打ちをした。



「玲央落ち着け」


「うるせえ!落ち着けられるかよ!おれの卵焼きを取られたんだぞ!」


「俺のやるよ。さーやちゃんが弁当にも入れてくれてるから朝は無くても大丈夫だし」


「弁当か...」



肩を落とし、ご飯を見つめる黒羽くん。


大根の味噌汁には一切手をつけていない。



「そういえば、毎日ありがとうございます。紗彩さんが作ってくださる卵焼きもハンバーグも美味しいです」


「そうそう。俺のクラスでも評判なんだよ。残念ながらカノジョじゃなくてバイトさんの手作りなんだけど~って毎日言ってる」



緑川先輩にも赤井先輩にも褒めてもらえて私は嬉しくなった。


しかし、目の前の彼は超不機嫌。


貧乏揺すりを始めた。



「こらっ、黒ちゃん!貧乏揺すりしてないでさっさと食べ!また遅刻するよ!」



沼口さんにも怒鳴られる始末。



「っるせえ!遅刻なんかしてねえ!」



そう吐き捨てると黒羽くんは食堂を飛び出していった。



「俺の出番ですね」


「白鳥ごめんねえ。よろしく頼むよ」


「はい」



白鳥先輩はこうなることを見越していたかのように完食していた。


茶碗を洗い場に置き、階段へ向かっていく白鳥先輩。



「はてさて、黒ちゃんのお世話役になるのはどっちなんだか?」



顔を見合わせる青波先輩と八代先輩。



「ボクは嫌だよ」


「俺だって勘弁だ」



誰も面倒見きれないなら、早めに更正してもらうしかない。


どうすればいいのか。


私は突破口を実は知っている。


だけどまだだ。


その手は最終手段なんだから。


黒羽くん、わがままはほどほどに。