「もしも~し、さーやちゃんそこにいるんだよね。何かあった?」


「ちょっと待って。今鍵開けるから」



と、立ち上がったその時。



「さあや」



私は黒羽くんに後ろから抱きつかれた。



「ちょ...離して」


「すぐ離す。あと10秒だけ」



黒づくめに捕まるって三上さんが大好きだった某アニメでは非常にまずい展開で、絶体絶命なはず。


それなのに、私だってそう思うはずなのに、


なぜ許してしまうのだろう。


なぜ抵抗しないのだろう。


その呼吸が、


その鼓動が、


聞こえなくなるのが寂しいと思ってしまう。


やがてそっと腕は離された。



「さあや、ありがとな。お休み...」



力なく倒れた彼を私は一目見てからドアに手をかけたのだった。



続く...