書きこむ書類がよくわからなくて、紀之は窓口に声をかける。

好みのタイプの沙織が座っている、右から2番目の窓口。
 
「申し訳ありません。こちらもご記入いただけますか。」

感じの良い笑顔で、沙織は対応してくれる。

笑うと目尻が下がって、優しい印象になる。


帰り際もう一度、沙織を見る。

顔を上げるタイミングを狙って黙礼すると、優しい笑顔を返してくれた。



『可愛いなあ』紀之の、ほんの息抜きのはずだった。
 

二日後、また銀行を訪ねた紀之。

偶然、沙織の窓口の順番で。
 

「先日は、ありがとうございました。」

毎日何人ものお客さんを対応しているのだから 多分 覚えていないだろう。

不審な顔をされる覚悟で、紀之は言ってみる。
 

「こちらこそ。お手を煩わせまして。」

沙織は気持ち良い笑顔で答えてくれた。

紀之は、心が弾んでいることに気付く。

沙織を、もっと知りたいと思う。