お互いの家族に話したことで 二人の気持ちは軽くなり、一緒にいる時間を明るくしていく。

ただ楽しくて。冗談を言い合っては、笑い合う。



相変らず、贅沢なデートに沙織が躊躇すると、
 
「今だけ。結婚したら、沙織に財布のヒモを握られるから。」

と嬉しそうに言う紀之。
 
「えー。私、丼勘定だよ。」沙織が言うと
 
「銀行員のくせに?」と驚いた顔をする。


そんな会話も楽しくて。

紀之は、どんどん優しくなり、沙織を美しく輝かせていく。


沙織もまた、紀之を癒し、寛がせることに幸せを感じていた。
 



新居は、お父様が所有するマンション。

表参道から少し入った、閑静な住宅街。

まだ築浅の中層マンションは、おしゃれな外観で。
 


「紀之さん、長男だから。松濤に同居させていただくつもりだったのですが。」

お父様達と食事をしながら、沙織は言う。

4人でマンションを見に行った帰り道。
 


「最初は二人で暮らしなさいよ。いずれ、帰って来てくれればいいわ。」

お母様は、優しく言ってくれた。

沙織が、紀之を見ると、優しく頷いてくれる。
 



何故こんなに、優しいのだろう。

家柄も違うし、廣澤家に、何のメリットもない結婚なのに。

ただ紀之に選ばれたというだけの沙織に。
 


ご両親の好意は、絶対に裏切らない。

沙織の心を占める 幸せな責任感は、沙織に毅然とした美しさを与えていた。