ホテルのレストランで、豪華な朝食を食べながら、
 
「何か、旅行みたい。すぐそこが会社って思えないね。」

非日常感に沙織は、歓声を上げる。

嬉しそうに頷く紀之は、
 


「そうだ。お正月休みは、本当の旅行しようか。」と言う。

沙織は笑顔で頷いた後、
 
「私、お休み少ないよ。紀之さん、予定合う?」

と遠慮がちに言うと、
 


「沙織との予定が、最優先だよ。」

と紀之は恥ずかしそうに言う。

いつの間にか“沙織”と呼ばれていることも、嬉しくて。
 


「楽しみ。」

と小さく言う沙織を、紀之は愛おし気に見つめる。
 

「海外行っちゃう?グアムとか。沙織、パスポート持っている?」

大胆なことを言う紀之を、驚いて見つめる沙織。
 


「持っているけど。今からでも予約できるかな。」

グアムと言われた途端に、沙織も行きたくなってしまう。

紀之と過ごすビーチは、ゆったりとして楽しそうで。
 



「後で、知り合いの旅行会社に聞いてみるね。キャンセルはなしだよ、沙織。」

少し不安そうな紀之の顔に、沙織は笑顔で
 
「紀之さんもだよ。」と答える。紀之も
 
「当たり前だよ。」と愛おし気に微笑む。
 


食事の後、一度部屋に戻った二人。

早速、紀之は旅行会社に電話して、旅行の予約をする。

その電話の口調も、丁寧で謙虚で。沙織をとても豊かな気持ちにさせた。
 

『では、それでお願いします。』

と言いながら、沙織にVサインをする紀之。

沙織は、幸せな喜びで、弾けるような笑顔見せていた。