絵里加の制服が 夏服になった頃 美咲が訪ねてくる。

有休をとったからと、詩帆ちゃんを保育園に預けて一人で。
 

「保育園はどう?病気しない?」

今にも雨が降り出しそうな、曇り空の日。
 
「それが、今のところ、案外元気よ。秋冬が心配だけど。」

職場復帰したせいか、美咲はこの前よりも 生き生きとしていた。
 

「美咲は大丈夫?仕事と家事で、大変でしょう。」

この前美咲は、ご主人の協力がないと嘆いていたから。
 

「まあね。朝は戦争よ。出がけにウンチをされたら、最悪。」と明るく笑う。
 

「でも、案外元気そうね。もっとげっそりしているかと思ったわ。」私も笑う。

ずっと働いていたから 赤ちゃんと二人 家で過ごすよりも 仕事をしている方が 元気なのかもしれない。


「それが、旦那が協力的になってさ。不器用なりに頑張ってくれるのよ。」美咲は言う。
 
「すごいじゃない、美咲。やっぱり斉藤主任、優しい人だから。」私も笑顔になる。
 

「この前、麻有子と話して。私も反省する事が、たくさんあって。私から旦那に謝ったの。それからかな。変わったの。」

多分、美咲は その話しがしたかったのだろう。
 

「美咲、偉いね。自分から折れるなんて。斉藤主任、驚いたでしょう。」

私が茶化すと、美咲はケラケラと笑う。
 
「私だって、悪いと思えば謝るわよ。でも旦那は、意外だったみたいよ。」
 
「でしょうね。」
 
「失礼ね。麻有子を見て、反省したのに。」
 

「私?私でも、少しは役に立てたの?」

私は、美咲の言葉がとても嬉しかった。
 

「好きで結婚して、最初は 色々してあげたいと思っていたのに いつの間にか自分のことばかり主張していて。本当に 顔も洗わない私を よく抱きたいと思ってくれたわ。」

美咲は明るく言う。
 

「じゃあ、ラブラブに戻れたの?」私は聞いてしまう。
 
「まあね。麻有子に言われて、一度リセットしたの。そうしたら、旦那の努力も見えるようになったから。」

断乳した美咲に美味しいコーヒーを淹れる。
 

「親がニコニコしていると、子供も機嫌がよかったりしない?」私は聞く。

だから、私はいつも笑顔でいたいと思う。
 
「そうなの。保育園に行ったからかと思っていたけど。パパにも泣かなくなったのよ。」

美咲は、驚いて私を見る。
 
「子供って案外敏感だから。親の精神状態が反映するのよね。」私は、大きく頷く。
 
「さすが先輩ママ。麻有子と話すと、勉強になるわ。」

美咲は褒めてくれる。
 
「やめてよ。照れるじゃない。」
 

「でも、本当。麻有子 セレブだけど それ以上に努力しているから。若い頃よりも ずっと綺麗になったし。30代の顔は自分の生き様って言うじゃない。」
 

「美咲。パスタにベーコン増量するから。」

私は、カルボナーラを作っていた。

この前のように、カウンターの椅子に腰かけて 美咲は笑う。
 
「デザートも付けてよ。」と。