あまり目の前で狂乱されても
事が大きくなるし
大事件に発展し兼ねないからね。


そんなアタシとはまるで違う彼女は…


「こんなケガなのに落ち着いてなんていられないよッ!
 なんでこんなッ
 何があったの!?」


ますます声は大音量だ。

青ざめながら必死に心配している様子は…
たぶん本心だと思う。

この人は
きっとこういうところは優しいんだと思う。
複雑な気持ちだけど
そんな彼女には憎めない自分もいる。

ジンが好きになった人だし…さ。


「どう説明したらいいのか…
 事件というか事故というか…
 ひったくりに遭ってしまったというか…」

「ひったくりッ!?」


声が裏返るほどのオーバーリアクションに
こっちまでもがハラハラさせられてしまった。


「鞄を盗まれちゃったの!?」

「えぇ…まぁ…」


“ひったくり”だからねぇ…。


「どうしよ…どうしよう!!
 警察だよねッ!?
 でも先に病院に行かなきゃッ!!

「大丈夫ですから…。
 先に警察に行きます…」


ケガも病院も後回しでいい。
今はそれどころじゃない。