「…もう大丈夫ですよ」

「本当にありがとう!
 すごく助かったわッ
 さすがジンくんねッ」

「そんな大げさな。」


こんな事で“さすが”と言われても
むしろ気恥ずかしいだけ。


けれど彼女はよっぽど嬉しかったのか
クモがいなくなったとわかると
さっきまで恐怖に怯えていた表情が一変。
満面の笑みを浮かべている。


「あ、お茶でも飲んでいかない?
 お礼もしたいしさ!」

「それは…
 気にしないでください。
 お礼をされるような事もしていないし…」


それに彼女がいるのに他の女の家に長居するなんて
さすがにマズイだろ。


「彼女さんいるのに…
 やっぱそれはダメ…よね」

「…すみません」


相手が誰であっても
誘いを断る事自体が心苦しい。
そんな俺の意図を
マリカさんは汲み取ってくれたみたいで少しホッとしている。
話がわかる人でありがたい。


「ううん、勝手な事を言ってしまってごめんなさい…。
 あーぁ…七星さんはいいな。
 ジンくんに愛されていて。」


悲壮感を漂う彼女の発言に
掛ける言葉が見つからねぇ…。