『私が先です!』
『私の方が先よ!』

…などという
醜い女の地味な争いが飛び交う光景を
アタシは編集部の入り口から
ヒッソリ目撃している。

危ない女は完全にアタシの方かもしれない。


「なーにしてるんすか?」


ポンッと肩を叩きながら
ひょっこり現れて声を掛けてきた風見くん。


「こんなところでコソコソ見ていて
 めちゃくちゃ怪しいっすよ。
 結構目立ちますし。
 何を見ているんですか?」

「え…別に見ていたワケじゃ…」


バレバレな嘘を平気でつくアタシ。

ジンと女性達とのやり取りの様子を
集中して凝視していたせいか
まわりの視線なんて視界にすら入ってなかった事に
彼の言葉で気が付いた。


「あー
 彼氏の副編集長っすか?」

「ちょッ」


風見くんの
わざとまわりに聞こえるように
大きめな声で言ってくれたおかげで
一気に好奇の視線を浴びる事になってしまった。

確実に邪魔しているようにしか思えず
タチの悪さを感じる。


「油断してると
 彼、あっという間に取られちゃうかもですねー」


アタシに顔を近づけて
脅しにも似た言葉を耳元で囁いてくる。