「そ…んな…」


こんな経験が初めてだからか
目の前に起きている現実の衝撃で
脈打つ心臓の鼓動は痛いほど速くて
それに引っ張られるように
息も苦しくなっていく。

止めどなく溢れる涙が
更に追い打ちを掛けていた。


救急車…呼ばないと…


震える手で119を入力し
発信ボタンを押そうとすると
ちょうどそのタイミングに
”ジン”からの着信が。


「お願いッ
 泉海さんを、助けてッ」


声にならない声で必死に伝えると
”只事じゃない”と電話の向こうのジンも
いち早く察してくれた。


電話を切ってからの数分間
何度も泉海さんに声を掛けるも
反応がなく目も開けてくれず
アタシの恐怖が助長されるばかり。


しばらくし駆け付けたジンも
最初は現状に驚き慌てた様子だったけど
すぐに冷静を取り戻し救急車を呼んでいる。


アタシはずっと涙が止まらず
心臓が締め付けられる感覚と
リズムを崩した呼吸が続く一方だ。

ジンはそんなアタシを抱きしめながら言う。


「セツナ…
 頼むから…コレ以上は泣かないでくれ。
 お前の心臓の負担になるから…」


絞り出すような
必死な声だった。