まるで他人事に
何もなかったかのようなこの男の態度には腹が立つ。

が、しかし。
確かに風見は俺の後輩。
仕事は仕事。
私的感情で対応するワケにはいかないし
何よりも
こんなヤツにキレても無駄なだけ。


「目を通しておくから
 お前はもう行け」


精一杯『落ち着けよ、俺』と
自分に言い聞かせながら大人の対応を心掛けているのに
この男には通じないらしく。


「セツナさんって
 やっぱスゲェいい女っすね」


まわりにバレないように
俺にだけ聞こえる声で囁いてくる。


「あ゛ぁ゛?」


思わず苛立つ声も大きくなり
俺の声に他の社員がビクッとしたのがわかった。


「あんまりキレると
 パワハラしてるって思われますよ?」


嘲笑う風見の反応に
更にイライラが増してくる。

コイツは俺に喧嘩を売ってんのか?
怒らせてぇのか?

あー…
マジで頭が沸騰しそうだ。



そんな時に広報課長から内線が入った。

頭を仕事モードに切り替えようと
一呼吸してから電話を繋ぐが
”外線で七星からの業務連絡”
その言葉に驚いてしまった。