9月1日。


今日から学校が始まる。


頼まれた方用に弁当を作り、朝ごはんもいつも通りに用意した。



「はい。凜くんとしゅうくんのお弁当」


「あっりがとぉ。さあやん行ってくるねえ」


「お弁当ありがとう。じゃあ、行ってきます」



1年生2人を見送り、残りはあの問題児だけに。



「だ~か~ら、おれはさあやの卵焼きしか食えねえんだっつうの!」


「今日だけは許してくれないかい。ときちゃんも忙しいんだから」


「今日だけじゃねえ。2日前と5日前も沼口さんのだった。おれを騙せると思うな!」


「ときちゃんは黒ちゃんの専属料理人じゃないんだよ。たまたま作れない時だってあるんだ。許しておくれ」


「許せねえ!ぜってー許せねえ!」



このままだと学校に遅れてしまう。


仕方がないから玄関まで連れていこう。



「沼口さん」


「ときちゃん助けとくれ」


「なんだよそれ?!おれが悪者みたいじゃねえか!」


「いいから行くよ。卵焼きは夕食に必ず出すから今日は勘弁して。ほら、バナナ食べて」


「バナナは嫌いなんだよ!」


「なら何も食べなくていいから行って。遅れるのが一番まずいから」



駄々をこねる16歳のお子様を沼口さんと2人がかりで玄関まで引っ張って行き、沼口さんが無理矢理靴を履かせ外に追い出した。



「まったく、本当に手のかかるやつなんだから!」


「明日からは毎朝一番に作っておくようにします」


「悪いねえときちゃん」


「いえ。これが仕事ですから」



はぁ。


朝から疲れた。