「志緒に迷惑かけたくないの」

「迷惑だと思ったことないよ」

「でも…」

「湖宵、お願いだから僕以外の男に頼ろうと思わないで」

「どうして?」

「……嫉妬、するから」



苦しそうに眉を歪めながら、それでいて不服そうに口を曲げながら渋々呟いた理由はあまりに可愛くて、泣いていたことを忘れて笑ってしまう。


漸く泣き止んだことに安堵しながら、やっぱり少し不満そうにする志緒に向かって、「分かったよ」と答えた。


私が志緒以外の男の人と話すときにだけ嫉妬が発動されるのは謎だけれど、もう理不尽に怒られたくもないので、志緒の言うことには素直に従おうと思った。



「湖宵が頼る男は僕1人で十分でしょ」

「じゃあ、その代わりぎゅってしてね」

「何それ可愛い」



そう言って再び何もしていないのにぎゅっ、と強く抱きしめられる。


いつも通りに戻ったことが嬉しくて、私も背中に腕を回してぎゅっ、と抱き着いた。