息が詰まるほど苦しい気持ちがアタシの体を支配して身動ぎさえ出来ない。
 振り解こうと思えば外せるはずなのに、そう思って動けば逃げられるはずなのに…逃れられない。

 ビクリと自分でも分かるぐらいに体が震えると自分の右側にあった恭介の首がゆっくりともたげられじっとアタシの顔を見つめた。


 見慣れたはずの恭介の顔が『決心』という揺るがない気持ちを湛えてる。
 きっとアタシの気持ちが入り込む隙がないくらいに。


「とんでもないことに巻き込んだのはわかってる、ごめん。謝って済む問題じゃないから、――俺が絶対守るから!」

「きょうす――」


 名前を呼ぼうとするよりも早くアタシの唇に柔らかい「何か」触れる。
 それが何かを理解するより早く、回された腕に力が込められ恭介の体とアタシの体が深く繋がった。

 熱い体温とアタシのものか恭介のものか分からないほど大きな鼓動が体中に響く。

 触れ合った唇から薄く洩れる互いの熱い吐息に眩暈がした。
 だけどそれ以上に羞恥と違和感がアタシのとろけかけた理性を呼び覚ます。


「いやっ!」


 恭介自身に対してというよりこの状況に対しての拒絶が言葉となりアタシの腕に力を呼び戻す。

 アタシは恭介の抱きしめる腕から力任せに抜け出すとベッドの上で後ずさった。