戀のウタ

「ミチル、1時間目のノート。写すだろ?」

「え…あ。大丈夫、里奈に借りるから」


(あれ?いつもなら俺に借りるのに…)

 俺の疑問はすぐに顔に出ていたようでミチルはほんの少しだけ戸惑った表情をして…すぐに俺から視線をそらした。

 なんだかミチルを困らせてしまったように感じてしまい俺は「そうか」と一言口にし納得したふりをして席に戻ることにした。


 自分の席に戻って昨日のことを思い出す。
 

(やっぱミチルにとって重荷だったかなぁ…)


 いつも明るく強気なミチルならいつもみたく笑って「しょうがない」と言ってくれるんじゃないかと思っていた。

 だけど普通に考えればとんでもないことに巻き込んだ挙句、嘘みたいな事実をカミングアウトしたわけだし…。

 俺がこんな非現実なことに慣れてしまっててて俺の感覚で考えていたけどミチルを酷く困らせているんだとさっきの一言で気付いてしまった。

 あんな顔させたの、いつぶりか思い出せない。


 朝に感じていたもやもやとしていたものが胸を急にきゅっ、と締め付けてくる。


 切ないというより寂しくて辛い、そんな痛みに俺は考えることをやめることでその痛みから逃げ出した。