戀のウタ

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 吉谷先生の相変わらずトゲのある物言いの授業を終えて一息吐く。
 チャイムが鳴った時のクラス全体から漏れる安堵の溜息の一体感は笑えるほどだ。

 春の球技大会もこれぐらいまとまってれば優勝出来たのにな、なんて思ったけど俺がいる以上、それはないかと心の中で自分にツッコミを入れた。


 そんなしょうもない考えを巡らすのをやめ、俺は写したノートをチェックするとさらに数学の苦手なミチル用に分かり易いように注釈も書き加える。

 まぁ今日はあまり進んでないから大丈夫だろう。
 説明が足りないようなら聞きにくるだろうと俺はたかを括ってノートを閉じた。


 そろそろ来るかなぁと思っているとちょうど教室の後ろ側のドアの開く音が聞こえる。
 休憩時間の喧騒に紛れてガラガラと戸の引く音と共にミチルが教室に入ってきた。

 俺は閉じたばかりのノートを手にして席を立つとミチルの席に向かった。
 ミチルが席に着くとそれに気付いた麻野が声をかける。

 ちょっと元気なさそうだけど大丈夫そうだ。
 俺は浅野との会話が途切れたのを見計らってミチルにノートを差し出した。