あー昨日のこと、やっぱ問題になってんのかなーって思ってるとお袋が「あんたは気にしなくていいのよ」と笑った。

 お袋はどこまで知ってるんだろう。
 お袋も元々特技研のスタッフだったけど今は辞めて普通の主婦だし。
 親父は家では無口だから知らないと思うんだけどなぁ。


 そんな事を考えながらもぐもくとパンを食べていると足元に生暖かい感触が伝わってきた。


「恭介、こぼれてる!」

「うぇっ!」


 どうやらだいぶボーっとしてたらしくマグに注いでた牛乳はいつの間にか零れてテーブルはおろか床にまで水溜りを作っていた。


「ご、ごめん」

「いいわよ、母さんが片付けるからあんたは着替えてらっしゃい」


 いつも通り反射でごめんと口にするとお袋はキッチンから布巾を持って出て来る。
 俺は言われた通り食べかけのパンを食いながら部屋に戻って着替えに入った。


 いつもなんかしでかしてるけどお袋はそれが当たり前のようにフォローしてくれる。
 俺が…アンドロイドが息子でも変わらずに。
 昔は怖くて聞けなかったけど最近になってやっとどう思ってるか聞いた。

 その時の答えは多分一生忘れることは無いと思う。


 「お腹を痛めて生まれた子だもの。私と父さんの大事な息子よ」


 …って。