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 午前中の授業を上の空で過ごし、昼ご飯もあまり進まず5時間目の体育の時間を向かえた。

 男女共に4組と合同で体育館でバレーボールだ。
 アタシのチームはさっきゲームが終わったところでBチームと交代しコートの外で休憩を取る。

 隣のコートは男子チームが使っている。男子の方はまだゲームの最中で恭介もコートの中だ。
 見ていると恭介はボレーしそこねたボールが頭に当たったらしく痛そうにうずくまってる。

 (ああ、またドジしちゃって…)

 アタシが見ているとどうやら視線に気付いたようで恭介がちらりとこっちを見た。
 少しはにかんで声に出さず「大丈夫」と唇だけ動かす。

 コートにいる恭介はいつものドジで穏やかな恭介だ。
 だけど昨日の晩は…この同じ体育館で別人のような強さで黒尽くめの男をねじ伏せた。

 昨日と同じ場所で同じ人を見ているのにまるで別人を見ているような気になってくる。

 
「あー恭介くん、ドジじゃなきゃいい線いってんだけどなー」


 隣から聞こえてきた言葉にアタシはびっくりして声の主を見る。
 同じチームの香苗だ。

 香苗はハンドタオルで汗を拭きながらアタシの隣に座るとやりと笑って見せた。