「ホ、ホント一人に出来ないんだから!」

「わ、わりぃ」

「あーもう早く行こ!」


 そう言ってアタシは昔よくやったように恭介の手を引いて走り始めた。
 下り坂で加速する足と共に心臓を打ち鳴らす音も加速する。

 久々に握った恭介の手は大きくしっかりとしていて改めて「ああやっぱり男の子なんだなぁ」と思った。

 そんな馬鹿みたいに当たり前のことを思ってアタシは恭介が本当に伝えたかったことから逃げてしまった。



 後で思えば…、この時がこれから起きることを変えれる最後のチャンスだったのかもしれないのに。