「…ミチルはさ」

「うん?」


 じっと瞳の奥を覗き込むように恭介がアタシを見る。

 しょっちゅう見ている恭介の顔だけど夕日のきついオレンジの照り返しを受けて影を作る顔は今まで見たことのないような顔で。

 …いつもの頼りない雰囲気は影を潜め大人びた顔にアタシの心臓はドキンと大きく音をたてた。

 そして心臓の音はとめどなくアタシの中を駆け巡る。

 内側からガンガン響く心臓の音を聞きながらこんな距離だったら恭介に聞こえてしまうんじゃないかと心配になった。

 それと同時に恥ずかしさで顔が熱くなる。


「あのさ…」

「う…、うん」


 なかなか切り出さない恭介にどう答えていいのか分からずあいづちだけ打つ。

 何かを言い出そうとする恭介の唇を見つめている間もまばらに車の走り抜ける排気音が聞こえた。

 そしてようやく恭介の唇が動く。