いつものように朝から不運に見舞われた恭介はお昼にも不運に見舞われていた。

 昼休みの終わり際、食堂から帰ってきた恭介を見てアタシは眉を吊り上げる。
 見るからに赤く腫れた腕とほっぺたにバンドエイドといういでたちだ。 


「ちょっと!何よその怪我!!」

「いやぁ…ちょっと…」


 そう言って恭介はバンドエイドを貼った頬を掻きながらばつが悪そうに隣にいた山内にちらりと盗み見た。
 恭介の視線を追ってアタシも山内を見据える。

 アタシのきつい眼光に隠し立て出来ないと悟った山内はおずおずとしゃべり始めた。


「いやさ、食堂で1年の男子同士が喧嘩始めちまってさー。コイツ、仲裁に入って…」

「なにやってんの?!喧嘩弱いのに!!」

「止めに入っただけだから喧嘩じゃないって」


 山内の口から『喧嘩』という単語が出てきてアタシは反射的に恭介に詰め寄る。
 だけど恭介はいつもの調子でのほほんと答えるだけ。

 昔からこうなのだ、弱いくせに喧嘩の仲裁に入って怪我をしたりいじめられたり。
 その度にアタシが守ったり仕返ししたり。

 いい加減巻き込まれに行かなければいいのにと何度言ったことか。