戀のウタ

　嫌だと心の中で連呼する。

　だが逃れようと命令しても『男』の恐ろしさと快楽を待ち望む浅ましい欲望という相反する感覚が一己の中でせめぎ合い千鶴の自由を奪う。


　抵抗しきれない情けない自分に絶望という言葉が千鶴の中に過った。
　それと同時にいっそこのまま流されて壊されてしまえば…という堕落した未来も。

　先程までの辛辣な言葉と向き合いたくなかった過去に対面させられたせいで聡明さを失った彼女はただじっと男の愛撫に耐える。　


　差し込まれた手がさらに進み太股の付け根まで延びた時に不意に氷川の動きが止まった。

　そして千鶴の耳元に唇を寄せて氷川が殊更に優しく囁く。


「そう言えば子宮、無かったんだな」


　その一言に千鶴の頭の中が真っ白になり、気が付いた時には氷川の手を払い退け平手で頬を打っていた。