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手掛かりは見つかった。
後はそれに向って私情を捨て邁進するだけだ。
白河はそう思いながら家路を急いだ。
私情を捨てる、それを心に強く思いながら。
住み慣れた1DKのマンションに戻る。
鍵を開けドアを開くとふわりと温かな香りが鼻腔をくすぐった。
部屋の電気は既に灯されており玄関フロアと直結のキッチンから夕餉の準備の音が聞こえる。
ああ、今日は『来る日』だったなと白河は料理に勤しむ彼女の後姿を見て今更のように思い出した。
ドアの開く音に作業していた人物――青柳千夏(あおやぎ ちか)が気付いたようでゆっくりと振り向き玄関に佇む白河を笑顔で出迎える。
「シュウお帰り、今日は早いね」
「ただいま。ちょっとあってな」
「ふーん、だからネクタイなのね」
白河のスーツ姿を見るなり納得したように出迎えた千夏が呟く。
その様子に白河は少しだけ表情を緩ませた。
本当はこんな風に幸せを感じている場合じゃないのに。
だがそんな白河の心持ちを知る由も無い千夏は穏やかに笑う。
「こんなに早く帰ってくるとは思わなかったからご飯まだ出来てないけどいい?」
「ああ、構わない。メールしなくてごめんな」
「ううん、いいって。もうじき出来るから早く着替えてきなよ」
千夏の勧めに白河は従い部屋へと入る。
着なれないスーツを脱ぎ部屋着に着替えてると押入れの奥からボストンバッグを引っぱり出した。
当面必要そうな物を考えバッグに放り込む。
乱雑に物が動く音に気付いた千夏がキッチンからひょっこり顔を覗かせた。
手掛かりは見つかった。
後はそれに向って私情を捨て邁進するだけだ。
白河はそう思いながら家路を急いだ。
私情を捨てる、それを心に強く思いながら。
住み慣れた1DKのマンションに戻る。
鍵を開けドアを開くとふわりと温かな香りが鼻腔をくすぐった。
部屋の電気は既に灯されており玄関フロアと直結のキッチンから夕餉の準備の音が聞こえる。
ああ、今日は『来る日』だったなと白河は料理に勤しむ彼女の後姿を見て今更のように思い出した。
ドアの開く音に作業していた人物――青柳千夏(あおやぎ ちか)が気付いたようでゆっくりと振り向き玄関に佇む白河を笑顔で出迎える。
「シュウお帰り、今日は早いね」
「ただいま。ちょっとあってな」
「ふーん、だからネクタイなのね」
白河のスーツ姿を見るなり納得したように出迎えた千夏が呟く。
その様子に白河は少しだけ表情を緩ませた。
本当はこんな風に幸せを感じている場合じゃないのに。
だがそんな白河の心持ちを知る由も無い千夏は穏やかに笑う。
「こんなに早く帰ってくるとは思わなかったからご飯まだ出来てないけどいい?」
「ああ、構わない。メールしなくてごめんな」
「ううん、いいって。もうじき出来るから早く着替えてきなよ」
千夏の勧めに白河は従い部屋へと入る。
着なれないスーツを脱ぎ部屋着に着替えてると押入れの奥からボストンバッグを引っぱり出した。
当面必要そうな物を考えバッグに放り込む。
乱雑に物が動く音に気付いた千夏がキッチンからひょっこり顔を覗かせた。


