「了解しました。その任務、承服します」
「そう言ってくれると思っていたよ。君は大層優秀だから完遂してくれるだろう。そうすればあんな片田舎の交番勤務でなく中央へ推してやれる」
『中央』――つまりはキャリア組という事だ。
その言葉に白河の心臓がドクンと大きく鼓動する。
確かに目指してはいた。
老いた母のことを考えればより良い待遇のキャリアへのルートは喉から手が出るほど欲しいと思う。
だが今の白河にはそうは感じられなくなっていた。
庁舎に入ってすぐキャリアとノンキャリアの途方も無い垣根の高さに苦い思いをしたはずなのに。
それが何故かは愚問だろう。
目の前の人物がそのキャリア組の体現者であるから。
この警察官らしからぬ風貌と言動を見れば幻滅する。
だが白河は局長を嫌悪しつつもそんな風に感じてしまう自分を愚かしいと思った。
警察という絶対的な縦社会では目の前の人種が優位な立場にいることが当たり前のだから。
己の保身を考えればこのような人間に付き従うのが一番良いことにも関わらずそれを心が否定している。
父の死を解き明かす為にはどんな汚い手を使うことも汚名を着ることも辞さないつもりだった。
なのにこんなところで嫌悪を感じ拒絶しようとしている。
そんな自分の青さに腹が立った。
暫くの沈黙の後、押し殺した声で白河は敬礼と共に「有難うございます」と言葉にした。
その言葉にどこまでの心が入っていたかは言った白河でさえ分からなかった。
「そう言ってくれると思っていたよ。君は大層優秀だから完遂してくれるだろう。そうすればあんな片田舎の交番勤務でなく中央へ推してやれる」
『中央』――つまりはキャリア組という事だ。
その言葉に白河の心臓がドクンと大きく鼓動する。
確かに目指してはいた。
老いた母のことを考えればより良い待遇のキャリアへのルートは喉から手が出るほど欲しいと思う。
だが今の白河にはそうは感じられなくなっていた。
庁舎に入ってすぐキャリアとノンキャリアの途方も無い垣根の高さに苦い思いをしたはずなのに。
それが何故かは愚問だろう。
目の前の人物がそのキャリア組の体現者であるから。
この警察官らしからぬ風貌と言動を見れば幻滅する。
だが白河は局長を嫌悪しつつもそんな風に感じてしまう自分を愚かしいと思った。
警察という絶対的な縦社会では目の前の人種が優位な立場にいることが当たり前のだから。
己の保身を考えればこのような人間に付き従うのが一番良いことにも関わらずそれを心が否定している。
父の死を解き明かす為にはどんな汚い手を使うことも汚名を着ることも辞さないつもりだった。
なのにこんなところで嫌悪を感じ拒絶しようとしている。
そんな自分の青さに腹が立った。
暫くの沈黙の後、押し殺した声で白河は敬礼と共に「有難うございます」と言葉にした。
その言葉にどこまでの心が入っていたかは言った白河でさえ分からなかった。


