「お前が巡視に出てる間に電話があってな。1800(イチハチマルマル)に管警局に来いってさ」

「…俺、何もしてないっすよ?」

「知るかそんなの。こっちも出頭要請受けただけで内容は一切聞かされてないんだ。とりあえずあとは俺がどうにかしとくから行って来い。もう時間ねぇぞ」

 そう言って森川はキャスター付きの椅子を引いて振り返る。
 壁に掛る時計をボールペンで差し示し白河を急かした。

 確かに出頭要請のあった時間まであと1時間程だ。

 白河は壁掛け時計を見ながら管警局までの道を思い出す。
 幸い管警局は県内だし急げば十分間に合うだろう。

 
「え…じゃあ一旦抜けさせて貰います」

「いや直帰でいいってさ。着替えて行け」

「直帰って…交替までまだ当分先っすよ?」


 この派出所は規模の大きいものではない。
 自分が抜けるとここに駐留する警官は森川と年配の井上巡査部長の2人になる。
 
 先輩に気を遣い用が終わればすぐに戻ろうと思っていたところにそう付け足されますます訳が分からなくなった。

 ただの呼び出しの筈なのに直帰を認められている。
 込み入った話にになるという事だろうか。

 そう白河が考えているところに森川は更に溜息を吐きながら彼を急かした。