アタシはぼんやりとその景色を眺めながら家に着くまでどうやって間を繋ごうか考えた。

 だけど間を繋ぐきっかけを探すよりも初めて家族以外の男の人の車に乗せてもらっているという事実の方が目の前をちらつく。

 白河先輩と2人きりになることは道場でもあったけど車の中っていう狭い空間だからなのかな。

 車で2人っきりってなんだかデートのシチュエーションみたい。

 2人きりの車の中って思った以上に緊張することなんだな、なんて考えてしまう。


 そんな事を考えながら助手席に大人しく収まっていると白河先輩が運転しながらぷっと噴き出した。


「そんなに畏まって…道場にいた頃みたいに「愁にぃ」でいいのに」

「だって…もう道場は辞めたし、アタシももう高2ですよ」

「ああもうそんなになるのか、早いな時間が経つのって」


 車から伝わるエンジン音と軽い震動がBGM代わりに狭い車内を満たす。
 心地よい雑音にアタシは緊張から伸ばしていた背中の筋肉をゆるめた。

 白河先輩が喋ってくれるとなんだか心地良い。

 この懐かしい声を聞くとあの頃に戻れたみたいでさっきまでの緊張が嘘みたいに消えていた。

 さっきまでの緊張が無くなったところで白河先輩が流れる景色を見ながら呟く。