一理は、ピアノを暫く見ていた。


このピアノで、あのリョウさんが…


「どうした?…出してみて?」



一理は、椅子の高さを確かめ座ってみた。


深呼吸をし、目を閉じ、指を載せた。


心のおもむくままに、いつの間にか指が動いてしまった。


♪♪♪♪♪


♪♪♪♪♪



♪♪♪♪♪



リョウ…
(この子は、一体…ショパンの革命を何で…今日や昨日習って弾けるはずない!……)



作業していた全員の手が止まった。


結城の口が、半開きの状態のままであった。



あまりの曲の激しさと突然の出来事に曲が終わっても誰も声が出なかった。



(リョウ)
「……じゃあ…もう少し、落ち着いた曲で、お願いできるかな?」



暫く間を置いて…

一理は弾き始めた。