渡辺は、向こうの方でもう一組の老夫婦と話す一理を見た。


自分と一理が全く違う世界の人間なのではないか、と感じていた。



今まで過ぎてきた様々な出来事が走馬灯のように渡辺の頭の中を駆け巡った。


あれは…もしかして自分の夢の中の出来事で、今此所で見てる一理の姿が現実なのではないかと…


一理は…そうだとしたら、もうっ自分なんかの到底手の届かない存在なのではないかと…


「渡辺さんっ?渡辺さんったら!どうしたんですか?一理を、呼んで来ましょうか?それとも…失礼しましょうか?」



「…ああっ、そうだな!俺っ!何か場違いって、気がして来た。」


「でもっ、ホント…此所に居る人達みんなが一理のことを愛しているのね!あんなにも可愛がられているのね!とても良く分かるもの。渡辺さんにも、分かるでしょ?」



「ああっ、とても温かい人達だな!俺にだって、それくらい分かるさ!いちりは、幸せものだよなぁ、このまま帰ろう!……」